備忘録

俺は早朝に飛び立つ

人間学の話題 第2回の用語整理

■何をひとつの存在者とするか
四次元主義
・時空間ひっくるめてひとつとする。
・例えば三島由紀夫なら、
 ・足先から頭まで合わせて三島由紀夫であるのと同様に、生まれてから自殺するまでの全体で三島由紀夫というひとつの存在者であり、
 ・手が三島由紀夫の部分であるのと同様に、東大で学生と討論していた時の三島由紀夫三島由紀夫の一部である。
 と捉える。

三次元主義
・ある時間において空間内に存在するのをひとつとする。
・例えばあなたなら、
 ・今はこの文章を読んでいるあなたがあなたの全てであり、
 ・2022年4月20日の11時頃においては、共C402の教室にあなたの全てが存在していた。
 と捉える。

(私)これらは両立可能な視点の違いとしか思えない。レゴブロックの家を家と見るかブロックの集まりと見るか選べと言われても困るのと同じように。


■時間に関する世界のあり方
1.現在について
われわれは今が何時何分何秒だとわかる。時計の針が指していない他の時間は今ではないと判断できる。
しかし、この文を読んでいる今現在においては、「何時何分何秒だとわか」ったのは既に過去である。つまり今ではない。
では、過去の自分は判断を誤ったのだろうか。そうとは言えないだろう。過去においては間違いなく「何時何分何秒」が今であった。
そのような、ある時点にとってのその時点自身を指す今を指標的現在と呼ぶ。

今が指標的現在に尽きるかと言えば、そうではないだろう。世界も時間内の存在であるならば、存在しているのは現在においてしかありえない。世界にとっての唯一の今を絶対的現在と呼ぶ。(世界が時間外的存在である、逆に言えば時間ごとひとつの世界であるならば、当然、絶対的現在は存在しない。)

(私)素朴に考えて、あなたがこの文章を読んでいるのが絶対的現在である。今思う、ゆえに今あり。
この立場は
「意識が絶対的現在にしかない」
というよりもむしろ、
「全てはあるなら絶対的現在にしかなく、一番確実なものは意識である」
だと思うのだけど、過去や未来と現在とで「物理的身体は全く同じ」だと認める論者とか本当にいるの?

2.世界には何があるか
現在主義
・絶対的現在だけが存在し続ける。

成長ブロック宇宙説
・過去と絶対的現在が存在し続ける。現在が過去となり積み重なっていく。

動くスポットライト説
・過去、現在、未来が既に存在し、絶対的現在がその時系列を移り変わってゆく。

静的時間論
・過去、現在、未来が既に存在し、指標的現在しか存在しない。

3.超時間について
成長ブロック宇宙説と動くスポットライト説において問題となるのは、過去と現在(と未来)が一挙に存在するのはいつにおいてなのか、である。成長したり動いたりする以上、何らかの時点を経過している必要がある。
絶対的現在においてであることはできない。なぜなら、今において過去はもう過ぎ去っているからだ。例えば成長ブロック宇宙における現在とは、ブロックの端のことであり、ブロック全体のことではなかったはずだ。現在の世界には現在の世界しか含まれない。
そこで必要となる概念が、時空の外にあるもうひとつの時間、超時間である。
過去と現在(と未来)は超時間における今(絶対的現在)に積み重なっていると考えればひとまず問題は解決する。
が、今度はその超時間のあり方が問われることになり……と進んでいく。

(私)私の理解が正しければ、問われているのは時間についての立場というよりも超時間についての立場である。
すなわち、
・現在主義は、超時間は存在せず、絶対的現在だけが存在する立場であり、
・成長ブロック宇宙説は、超時間が存在し、そこに過去と絶対的現在がある立場であり、
・動くスポットライト説は、超時間が存在し、そこに過去、現在、未来がある立場であり、
・静的時間論は、超時間が存在せず、過去、(指標的)現在、未来がただ存在する立場である。
というように。
静的時間論は受け入れ難いにせよ、他に関してはそれを決定することに意味があるのかもそもそも決定しうるのかもわからない。物理法則を神様が決めていようがいなかろうがどうでもいいように、超時間がどうなっていようとどうでもよくない?

心身二元論における2つの説(余談)
心身が相互作用するという説
・意識は物理法則の外にあり、意識が物的世界に働きかけることができる。
・物理法則で物理現象を説明しきれなくなるのでこれまでの(簡潔な)科学的世界観との相性がよくない。
・意識が脳に宿るものだとすると、脳という物理法則に従うもので構成されているものから物理法則外のものがいかにして生まれるのか、という問題がある。

随伴現象説
・意識は脳やらの物理的な反応に付随する(物理法則に組み込まれている)ものであり、意識は受動的なものである。
・われわれの「自分"が"何かをしている」という直感に反する。

(私)どうでもいいけど自分は、この世界において随伴現象説が成り立っているだろうと割と本気で思ってる。心的現象無しに全ての物的現象を説明できようが、現に(少なくとも私自身の意識という確実な例がひとつ)存在するから仕方ないもんね。